HAVES! 第三話「私立鳳凰学園高等部」

 

 

 

 「うわ」

 眼下に広がる蒼い海に純は思わず声を上げた。

今、彼はヘリコプターに乗っている。島に行く定期便がちょうどないため、ヘリでお迎えが来たのだった。

「すげ。墜落したら即死って感じ」

「ちょっとぉ、不吉なこと言わないでよー」

 純の横に座っていた天利が彼をこづく。

「見えましたよ」

 パイロットが前方を指差す。

 海の上に浮かぶ巨大な島。空からでも白く巨大な建物が建っているのが分かる。それがあまりにも巨大すぎて島の周りの山があまり気にならない。

もっと良く眼をこらすとその建物の南側には小さい建物がいっぱいある。まるで町のように。

 その町の東側には灰色っぽいこれまた巨大な建物が乱立している。その更に東側には港も見えた。

「なんだよ、あれ」

「あれが私立鳳凰学園高等部ですよ」

「あれがっ? 島まるごと?」

「まるごとです」

「すごーい!」

 ヘリが島の上空へとたどり着いた。

「生徒何人いるんだよ」

「約三千人ですね」

「一学年千人っ?」

「それはさすがに多すぎなんじゃないのー?」

「鳳凰グループが経営する有望な人物を育成する場所ですから。せっかくですから島の上空を一周しますか」

 スピードが少し落ちた。

「あの白い建物が校舎。全部で六つの建物からなりたっています」

 純と天利は窓から下を見た。さっきは角度の関係で分からなかったが、広場のような開けた場所を中心として放射線状に五つの建物が建っている。

そしてそれらの裏に一つ。何故かそれだけ明るい色をしている。

 ヘリが校舎の南側へと向かう。先ほど二人が見た建物が密集している地帯だ。

「あれが学園街です」

「町なのかよ」

「そうです。基本的に生徒はこの島から出られませんからね。あの街で生活必需品などを買うんです」

「そのお金はどこから? 仕送り?」

「いいえ。あの街の店の店員はほとんど生徒です。アルバイトというやつですね。自分で稼ぎ自分で必要なものを買う。社会勉強です」

「物の仕入れは?」

「無論鳳凰グループがすべての費用を出しています」

「どんだけ金があるんだ」

「さっすが鳳凰グループだぁ!」

 呆れている純とは対照的に天利は感心している。ほう、と溜息まで漏れた。

「そしてあれが学園寮」

 灰色の建物を指差す。

「全て個人部屋。バス・トイレ・キッチン付き。なので自炊も出来ますが食堂がついているので、ほとんどの生徒はそこで食事をとることが多いです」

「詳しいね、あんた」

純は感心した。

「私も生徒の一員ですから」

「はあっ?」

 二人は同時に訊き返した。

「……二年G組の湯川房之介です。貴方たちと同学年ですね。……ああ、向こうで会っても初対面のふりしてくださいね」

「どうして」

「君たちを迎えに行ったことがばれると色々と面倒なんですよ」

「何で?」

「……ではそろそろ着陸します」

 湯川は操縦桿を握りなおした。

 

 

 

「ようこそ、鳳凰学園へ。西原純くん、小坂天利さん」

 純と天利をヘリポートで出迎えたのは白いコートを羽織り、片眼鏡をした少年だった。彼の周りには何人かの黒服の男たちがいる。

 二人と荷物を降ろすとヘリコプターはすぐに何処かへ飛び去った。

「途中転入で大変だろうけど頑張って」

「貴方は?」

 興味がなさそうな純を尻目に天利は彼に訊いた。

「これは失礼」

 少年は右目の眼鏡の位置を調整する。レンズの色が濃いせいで目に浮かぶ表情までは読み取れない。

「僕は綾月(こう)。三年A組。そして生徒会長もやっている」

「わざわざありがとうございますぅ」

「……普通校長とかが来るんじゃねえの?」

 素直に頭を下げた天利とは逆に純は首をかしげた。その様子に光は唇に微笑みを浮かべ、質問に答える。

「――この学園に校長はいないからね」

「あ?」

「この学園では生徒会が全てを動かしている。もちろん運営に関する責任者はいるけど島の外だ。

校則から教師の解雇問題、学園設備の充実までそれらは全て生徒会の仕事だ」

「ほぉ〜」

 ありえないスケールに天利は溜息を漏らす。

 しかし純は興味がないのか、光から視線を外した。

「純くんはあんまり驚かないんだね」

 光が大げさに両手を広げて逆に驚いてみせる。しかし純は視線を合わせない。

「……さて、じゃあ寮に案内させようか」

 光がそう言うと周りに居た黒服の少年たちが二人を促した。

「――なんだよ、こいつら」

 彼らが纏う異様な雰囲気にさすがの純も口を開く。

「君たちのための案内人だよ。あとはよろしく」

 光の言葉に頷き彼らは純と天利の荷物を持ち、二人を促す。

素直に彼らに二人は従った。

 歩き始めた純たちの後姿を光はじっと見つめる。

「――ようこそ、西原純。小坂天利。君たちが……いや君たちのうちの一人でもいい。

生徒会に役立つ存在であることを願っているよ。……この国のためにね」

 

 

       ◇ ◇

 

 

 ドアをノックする音で純は目を覚ました。

 見慣れない白い天井。

顔を少し傾ければ勉強机とパソコン、それにテレビが視界に入る。

「此処は……ああ、そうか」

 自分の状況を思い出し、純はもぞもぞと体を動かす。まだ眠いらしく、大きなあくびを一つした。

そういえば、とドアがノックされていたことを思い出すが、無視して再び眠りにつく。

 

 

こんこん。

 

こんこんこん。

 

こんこんこんこん。

 

……ごんごんごんごんごん!

 

「だぁぁぁぁぁっ! 誰だ、人の安眠邪魔すんのはっ?」

 がばっと跳ね起き、純は部屋のドアを開ける。

 そこにいたのは天利だった。

「やっと起きたー」

「なんだ天利かよ。てめえ、俺の睡眠時間とりやがって……!」

「……初日に遅刻するかもしれないーっていう状況を回避させてあげようと思って起こしにきてあげたんだけどなぁ?」

「……遅刻?」

「そー遅刻―。もう時計は八時十五分を指しておりますです。始業時刻は八時四十分。ちなみにここから校舎までは歩いて十分かかりますのです!」

「うざってえ日本語使うな!」

 純は慌てて顔を洗い、歯を磨き、部屋の奥に引っ込み、クローゼットを開けた。私服も持ってきているが、時間がないので着慣れている黒の詰襟に袖を通す。

そして筆箱と財布だけが入った鞄を持ち、部屋を出た。

「純、鍵―」

「言われなくても分かってる」

 がちゃり、と純は鍵をかけて、鞄に放り込んだ。

「ん、ジャスト十分! 間に合うね。身支度の早さに関しては、さすが純だ!」

「さりげなく時間計ってんじゃねえ!」

 純はさっさと歩き出す。廊下の突き当たりにあるエレベーターのボタンを押した。後ろを天利がついていく。

今日の天利はタートルネックのシャツにプリーツスカートとブーツ、それにトレンチコートを羽織っている。あまり見たことのない姿に純は思わず天利を見てしまう。

「なーにー?」

「い、いや……なんでもない」

 チン、と軽い音がしてエレベーターのドアが開いた。二人はそれに乗り込む。

一番下まで降り、二人は自動ドアの玄関を抜ける。

 落ち葉が多い道を歩いていく。何人もの生徒がそこを歩いていた。

「校則ってねえのかな……みんな格好まちまち」

「ちゃんと生徒手帳読んでないなぁ? 校則は学校に遅刻しなければ良し! 学校に遅くまでいなければ良し! それだけー」

「ふーん」

 やがて二人は校門にたどり着いた。

「うわーすごいねえ」

 目の前に聳え立つ三棟の巨大な建物に天利は感心する。

「――西原純くんと小坂天利さんだね?」

 中年の男性が二人に声をかけてきた。

「あ、はいーそうですけどー」

「君たちの担任になる竹中だ。よろしく。」

「はーい」

 返事をする天利に対し、純は頷きを返しただけ。竹中はそれをなんとも思わなかったらしく背中を向ける。

「それでは教室に案内しようか」

竹中が歩き出す。純と天利はその後についてく。

一番左の建物の中に入り、エレベーターで三階へと上がり。

 そこから教室を一つ通り過ぎ、竹中は足を止めた。

「さ、ここが君たちのクラス。二年G組だ。入りたまえ」

 がらがら、と竹中はドアを開けた。二人が中に入った途端、いっせいに視線が集まる。

「えー今日からこのクラスに入ることになった、西原純くんと小坂天利さんだ。皆、仲良くしてやってくれ」

 竹中の声に生徒から思い思いの了承の返事が返ってくる。

「じゃあ席は……西原くんはそこ、湯川の隣。小坂さんは……清田の隣でいいか」

 示されるまま、二人はそれぞれの席につく。

「あ」

 純は座席の隣の人物に見覚えがあった。

「湯川、お前」

「初めまして、西原くん。よろしく」

 にっこりと笑い、片手を差し出す湯川に純はヘリの中で言われたことを思い出した。

「あ、ああ……こっちこそ、よろしく」

 純はその手を握った。

 

 

 

 昼休み。

「純―、学食行こー清田くんが案内してくれるって」

 天利に言われ顔を上げた。

「……あ?」

 そこにいたのは紅いスカートに白いベストを着ている――

「お前、男だよな? うっすらとひげが……」

「まあ、レディーに向かって何いうのぉ、この人。あたしは女の子よぉ」

 そう言って彼女はウインクする。

「あたし、清田信子、よろしくぅ」

「……あ、ああ……。……よろしく」

「さて、じゃあ行きましょう」

 清田は二人を促した。教室を出て、階段で一階まで降りる。朝、やってきた方向と別方向にある昇降口から出ると、そこには巨大なオレンジ色の建物があった。

「こ、これが学食っ?」

「そうよ、なんてったって三千人の生徒の面倒を見る食堂なのよぉ? これくらい当然よ。ま、ここでも間に合わない人は学園街に買出しに行くみたいだけど」

「へえ」

 軽く頷きながら純は学食に入ろうとした。

「あ、待ってぇ西原くん!」

「へ?」

 振り向こうとした、瞬間。

 

 ドン!

 

「うわっ!」

「きゃあっ!」

 

 純は誰かとぶつかってしまった。ちりん、と済んだ音がする。

「あててて……悪りい悪りい、前良く見てなかったもんで……」

 ぶつかった相手を純は見る。

 髪の毛は長い金髪でウェーブがかかっている。身につけている洋服はかなり高そうだ。手首には鈴がついたブレスレットをしている。

スカートについたほこりを払いながら、彼女は純を見る。

「……このわたくしにぶつかるなんて、いい度胸じゃありませんこと?」

「は?」

「わたくしを誰だと心得ているのかしら?」

「いや……転校してきたばっかで知らないし」

「に、西原くん! そ、その人はねぇ!」

 何故か真っ青になった清田が慌てて口を開く。

「あら、転入生さんでいらっしゃいますの。おほほ、これは失礼を。では、わたくしを知らなくても、仕方が無いというやつですわねえ。

このわたくし直々に教えてさしあげるから、ありがたく思いなさいね?」

「……は?」

 彼女の高慢な態度にさすがに純も虫の居所が悪くなってくる。

「わたくしの名前は篠宮アリス。呼ぶときはアリスお嬢様、と敬意をもって呼ぶこと。父は日本人。母はアメリカ人。

そして家は超リッチ。この学校を経営する鳳凰グループとも個人的なお付き合いがありますのよ」

「よーするに、ただの家自慢馬鹿なわけだ」

 鼻高々だったアリスの表情がその一言で変わる。

「おほほほ、これだから一般人は……。お付き合いがあるということは、わたくしは多少なりともこの学校で力を持っているということですのよ? 

そんなわたくしにたてつくにはそれなりの覚悟もあるのでしょうねえ。さっきぶつかってもきたことですし」

「それは謝っただろ!」

「あんな謝り方じゃ足りませんわ! 地にひれ伏し、『お許しくださいませアリスお嬢様』とお言い!」

「誰が! この馬鹿女!」

「このわたくしが優しくしてあげてるのに……このサル!」

「何だとこのチビ!」

 純が言い放つとアリスの顔色が変わる。

 確かに二人の間には十五センチ以上の差がある。

「きーっ! まあ、人が気にしていることを! あなたがにょきにょき伸びすぎなのが悪いんですわ!」

「人のことサルって言っておいて、お前がサルじゃねえか!」

「本気で退学にして差し上げましょうか?」 

 二人の間に本当に火花が散り始めた。周りの生徒もざわざわしている。

「あーもう、仕方ないなー」

 やれやれ、といった感じで天利が止めようとした。

 その時。

「お止めなさい、アリス」

 不意に凛とした声が響いた。全員の視線がいっせいにそちらへ向く。

 そこには和服姿の少女が立っていた。

「ゆ、由乃……」

「だらしがないですよ、アリス。彼はきちんと謝っていましたよ? 許してあげなさい」

 少女の言葉にアリスはぐ、と言葉を飲み込んだ。そして純を見据えると、

「きょ……今日は由乃に免じて許して差し上げますわ! でも次からは絶対に! 許しませんわよ!」

 アリスは校舎の方に歩き出した。その後を由乃もついていく。

 純とすれ違うときに彼女は軽く一礼した。

「すごーい、あの人―。あの我侭を一発で沈めちゃったよ」

「なんなんだよ、あの女はっ!」

 だん! と純は床を思いっきり踏んだ。

「……本人も言ってたけど、金髪は篠宮アリス。大富豪のお嬢様。和服の方は黒崎由乃。二人とも二年R組。

……西原くん、悪いことは言わないわぁ、あの二人には逆らわないほうがいいわよぉ」

「なんでだよっ?」

「あの二人はもしかしたら生徒会メンバーかもしれないからよぉ」

「それが……どうしたんだよ」

「他の学校と違ってこの学校では生徒会が絶対の権力を持つの。あの二人がそうなんじゃないかって噂があるの。会長を除いて誰が生徒会委員なのか公表されてないからねぇ」

「どうしてー?」

 天利が問う。

「誰が生徒会のメンバーが知れたら、それを利用しようとする人がいるからってことらしいわよぉ。あたしが思うに見張りの意味もあるんじゃないのかしら」

 生徒会室の場所も分からないし……と清田は結んだ。

「けっ、何が生徒会だよ……」

 そう呟いて純はあることを思い出していた。

 

 

 

 お昼休みが終わり、五時間目の授業が始まる直前。

 純は隣の湯川に囁いた。

「……お前が初対面だって言った意味が分かったよ」

「でしょう? ばれたら色々と大変なんですよ」

「俺にはいいのか?」

「黙っていてくれるでしょう?」

 にこりと笑う湯川に純は黙って頷いた。

「では改めて……二年G組生徒会役員、湯川房之介です、よろしく」

 

 

 

 放課後。

 純と天利は清田に案内されて学園街へとやってきた。

 入り口を示すアーチをくぐると広い道の両脇にずらりと並ぶ建物が目に入る。

道はコンクリートで舗装され、その上をせわしなく動き荷物を運ぶ者。店頭でお客さんの相手をしている者。その誰もが高校生。

 早めにアルバイト見つけなきゃな、と純は思った。

「ここがこの街のメインストリートよぉ。生活に必要なものはたいてい揃うわよぉ。そこにスーパー、向こうに文房具店、そっちに八百屋、あっちに肉屋、魚屋」

「へーすごいんだねー。遊ぶところはあるのー?」

 きょろきょろしながら天利が訊く。純は興味なさそうに二人から視線を外していた。そばにあった一本の木を見る。と、その横にも道があることが分かった。

「もちろんあるわよぉ。スーパーの向こうに見えるアーチがあるでしょお。あれをくぐるとそこは通称歓楽街。

カラオケやゲームセンター、ボーリング、ビリヤードなどなどおおよそ娯楽と思われるものはあるわよ」

「何本かわき道もあるみたいだけど、そこには何があるんだ?」

「だめよぉ西原くん」

 清田が純の腕を掴んだ。強い力に純はあやうく転びそうになった。

「わき道には妖しいお店がいっぱいあるんだからぁ……」

「妖しい、店?」

「そう例えばぁ……」

「例えば?」

 純がそう聞き返したきり、清田は黙ってしまう。

「……? おーい……」

 焦れて純が急かそうとすると。

「だめ!」

「は?」

「あたしの口からそんなはしたないこと言えないわぁ!」

「は、はしたない……?」

「純、セクハラー訴えてやるー」

「どうしてそうなるんだ!」

 天利をにらみつけながら純は夜、もう一度ここに来ようと思った。

 あちこちに植えられた木がざわざわと音をたてた。

 

 

 

 夜。

 純は外に出た。無論、昼間行けなかった場所に行くためである。

 冷たい空気に純は冬が来る、と思った。

 空には雲一つ無く、満月が良く見えていた。

 一瞬だけ震え、純は寮を後にする。

 

学園街は夜だというのに大勢の人がいた。メインストリートには煌煌と明かりが灯っており、コンビニでは、中では店員が接客をしていた。

普段、必要なものを買うと思われる店は当然のようにシャッターが下りている。そこでは路上ライブが行われていた。

純は裏路地へと入った。表と違い、そこには独特の雰囲気があった。人工的な明かりがあまりないのもその原因だろう。

それでも木が等間隔に植えられているのは、少しでも自然を増やそうという計画が生徒会にはあるのだろうか。

 この先になにがあるんだろう。

純はどきどきしながら足を進める。

――五分ほど歩いただろうか。

 

 その瞬間。

 

 空気がうおんと啼き、純の上を何かの影が横切った。

 

「な……っ?」

 ほぼ無意識に顔を上げる。

 

 ――視線の先には二つの影があった。

 一つは人間のような。

 ただし、その手足と思われる所からは鋭い爪が生えていた。

 もう一つは大きな翼を持ち、その体はひょろりと蛇のようだ。

 

 人間の影が、蛇の影に噛み付いていた。

 

「な、あ、あ、あ……」

 信じられない光景に純はゆっくりと後ろに歩き始める。

「あっ?」

 いきなり目の前が明るくなり、更に純は面食らう。

 

 ――蛇の体が燃えていた。

 

「……こ、これ……何……何なんだ……っ?」

 何度もそう繰り返しながら純はその光景から目を反らし、そこから離れたい一心で走り出した。

 

 怪物。

 そうも考えていた。

 

 

 

 純が走り去ってから数十分後。

 その裏路地には焼け焦げた蛇の死体があった。

 さあっ、と風が通り抜ける。

 途端に蛇の死体が粉になり舞い上がっていった。

 その傍には二人の人間がいた。

 黒ずくめの少年と二つ結びの少女。

「……見られた、か」

「別にいいんじゃないの? 見えたってことはあの男の子にも素質があるっていうことだぜ」

 少女がふう、と溜息をつく。

「ご苦労様、裕くん、琴音くん」

 不意に物陰から何者かの声が響いた。

「あ、会長」

 闇の中から出てきたのは生徒会長の光であった。

「見てた子がいたみたいだね」

「まずいぞ、光殿。これでは……」

「まーったく、あんたは心配症なんだから……大丈夫だって言ってるだろ」

「あの子……転入してきたばかりの子だ」

 光の言葉に裕と琴音は息を呑む。

「へー、そうなんだ。同調率が高いのかね?」

「まだ何とも言えないな」

 光はコートを翻した。顔を上げて満月を見る。

「とにかくあの子には、仲間になってもらおう」

「どうすんのさ?」

「手はある」

 短く答えて、光は再び闇の中に消えた。

 残された二人もすぐに消える。

 あとには何も残されなかった。

 

 

 

 




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さてさて、HAVES第三話です。
物語がついに本格的に動き出しそうです。
頑張って続き書くぞ〜!


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