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   DRAGON DREAM

 

 

 

 彼がその仕事についたのは、例えば、自分を傷つけた輩がいるからだとか、両親がそいつに殺されたとか、大量に人を殺す存在を許せないからでもなかった。

 家柄、血筋、そういったものからだった。

 (たつみ) (りょう)はいつものように満月が見下ろす中、街を歩いていた。時刻はもうすぐ真夜中。もうすぐ日付が変わる頃だった。繁華街ならいざ知らず、郊外の住宅地に人通りなんてなかった。

 最近急に冷え込んできたせいで、慌てて引っ張り出したダウンジャケットにはどことなく皺がよっていた。

(クリーニングに出さなきゃいけないですかね?)

 ふう、と溜息を一つついて、良は歩く。

 突如、彼の視界の端に何かが揺らめいた。

 顔の向きを変えず、良は目だけをそちらに向ける。

 そこに居たのは黒い影だった。良に気付いたのかそれは少しずつ人の姿になっていく。

 完全にそれになったあと、影はにやりと口元を歪ませた。

「こんばんは、悪霊さん。まだそんなに人を食べていないようですね?」

 良が言うと影は笑った。

『これから食べるさ。そう手始めに貴様からな?』

 そう言った途端、影が跳躍した。その姿が良の視界から消える。

 しかし彼は慌てずに上を向いた。

 そこに影がいた。

「甘いですよ。僕の腕をみくびらないで下さい」

 良の手にはいつのまにか数本の小さいナイフが握られた。それらを彼は無造作に上空へと投げる。

 影は驚いたようだった。その雰囲気が空気を通じて良に伝わる。

 ナイフは淡い光を放ちながら影へと向かって跳んでいく。影はそれを避けようとした――がすでに遅かった。

 強い光を纏い、ナイフは影を次々と貫いていく。最後の一本が影の胸を貫くと同時にそれは消えた。

 重力にしたがって落ちてきたナイフは量はこれまた特殊な造作を見せずに受け止める。それらを持っていた筒の中に仕舞った。

「さて、帰りましょうかね?」

 良はその場を立ち去った。

 満月と町並みは変わらずにそこにあった。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 例えば、悪魔という存在。

 例えば、悪霊という概念。

 

 それらは有史以前からこの世に存在し、この世界に歴史というものが生まれてからも存在し続けた。

 人間に害悪をもたらす彼らに対し、人間は何もしなかったわけではなかった。彼らに対抗する術を身につけていった。その術を見につけた人間はやがて方々に子孫をつくり世界中に広まった。

 その血筋の一つが良の生家――巽家である。

 人々が知らないだけで、彼らは未だに人間を苦しめている。

 

 例えば、突然死というもの。

 例えば、事故死というもの。

 例えば、自殺、というもの。

 例えば、殺人、というもの。

 

 それらを少しでも減らすために活動している人間がこの世にはいる。

 

 人々が知らないだけで。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「良―おはよー宿題やってきたー?」

 翌日、良が学校に行くと、すぐに話しかけてくる少女がいた。

「おはよう、夢」

「ねえねえ、宿題やってきた?」

「またそれですか……たまには自分でやったらどうですか?」

「だってぇ……分からないんだもーん」

 ショートカットの少女は上目遣いで良を睨む。

 この少女の名前は角田(すみた) (ゆめ)

 良の幼馴染である。

「分からないって……一昨日出た宿題は国語でしょう。貴女、確か国語は万年5だったはずでは?」

「国語でもぼくが得意なのは現代文なの。古典は論外」

「『夏目漱石作品を呼んで感想文』は思いっきり現代文だと思いますけど?」

「ぼくに言わせれば古典なの。平安時代と同じレベルなの。さ見せて、良!」

 強く押され、良はしぶしぶノートを夢に示した。

「ありがとー」

 満面の笑みを浮かべて、夢はそそくさとそれを写し始める。

「まんまだとばれますよ」

「接続詞変えるから大丈夫―」

「そういう問題ですか?」

 呆れながら良は夢から視線を外し、窓の外を見た。

 しかしすぐに目の端で彼女を見る。そして思った。

(夢も元気になりましたね――)

 あの忌まわしい日から。

 五年前のあの日から。

 

 

 

 思い出すのは空には雲一つなく、浮かぶは満月のみ。

 そんな中、覚えているのは姿や景色など、細かいことではなく、ただ声だけ。

 

『良、兄貴が……兄貴が……死んじゃ……った』

 

『あの子も可哀想に。たった一人の兄を失ってしまうとは』

『まるで自分のせいではない、そんな言い方ですね』

『兄に逆らうのかい、良? 俺のやることは全て正しいんだ』

『夢の御兄さんを殺したのも正しいと言い張るのですか』

『ああ。あいつは邪魔だったから。俺の行為を邪魔しようとした』

『だからと言って』

『うるさいよ、良。赤の他人なら殺してるところだ』

『兄さん』

『可愛い可愛い弟だから。殺さないであげるよ』

 

 

 

「……良! ねえ、良ったら!」

 夢の声で良は我に帰った。

「どうしたの?」

「あ……いや、なんでもありません」

「変なのー。あ、ノートありがとー」

「はいはい」

 夢からノートを受け取り、良は一つ溜息を零した。

 

 

        ◇ ◇

 

 

 一月経つとまた満月がめぐってくる。

 良は宿題を全てやり終えると外に出た。

 吐く息が白い。

 す、と目を閉じる。

 空気が微妙に震えて、良に敵の存在を伝える。

「――今日は随分と数が多いんですね。明日、学校を休ませる気ですか?」

 良は呟いた。呟いて、街の中を走り始める。

 すれ違う弱いものにはナイフを一投げ。少しばかり手ごわいものになると二三本を同時に投げた。梃子摺るかと思っていた仕事が思ったより早く済みそうだと思い、良はほっと息をつく。

 ――しかし、その予感はすぐに立ち消えた。

(おかしい)

 良の第六感がそう告げる。

(数が多すぎる)

 今までにも一晩で数多くの悪霊や悪魔が出てきたときはあった。しかしそれは強いそれに弱いそれらがくっついていたとしてもせいぜい十体くらいで、今夜みたいに二十も三十もいるはずもなく。

 上空から襲い掛かろうとしていたそれをナイフで仕留めて、良は足を止めた。

「この気配……!」

 それは忘れるはずもないもの。

 

「……いるのですか、兄さん?」

 

 良の声に、さああぁぁぁぁぁ……と風が動く。

 ゆらり。

 その一部が揺れた。

 

「久し振りだね。良? 可愛い弟?」

 街の中心。今は誰もいない交差点。

 そこに良の兄……薫はいた。

 

「五年ぶりかな。相変わらず可愛いままだね」

「兄さん……何しにここに戻ってきたのですか?」

「何をとは御挨拶だね、良? この王となった兄に向かって?」

 す、と薫の手が動く。

 

 途端に夥しい数の敵が現れた。

 それらを感じ、良の背筋に寒気が走る。

「王……? 兄さんが?」

「そうだよ、良。兄さんは彼らの王になったんだ。」

「それは僕等の敵のはずです。僕等巽家は代々それを狩るための使命を持っているはず……忘れたとは言わせませんよ、兄さん」

「忘れてないよ良? 可愛い弟よ。手段は違えど目的は同じだ」

 二人の間を風が通り抜ける。

 それが、兄の背後にいるモノたちの笑い声のように良には聞こえた。

「彼らを従えれば彼らは人間に悪さをすることはない。こうして彼らを治めれば、全てが上手くいく」

「兄さん……」

「それにね、良」

 薫はふふふと笑った。そして上唇をゆっくりと舐め上げる。

「彼らは兄さんの言うことを何でも聞いてくれる。そう例えば……兄さんのために、人間の魂さえも持ってきてくれる」

「! それは……兄さんっ……」

 良の顔から血の気がひいていく。震えそうになる体を必死で押さえた。

「まさか……まさか兄さん……闇に……堕ちたのですか?」

「堕ちたとは、嫌なことばを使うんだね良? 言っただろう、兄さんは彼らの王になったんだ」

 薫はまた笑う。良は全くそんな気になれなかった。

 闇に堕ちる。

 それは巽家のような『それ』を狩る家で使われるある種の表現。

 狩るべき者が狩られるべきモノに捕らえられる。

「兄さん、兄さんは闇に堕ちた」

「あんまり変なことを言うと、殺しちゃうよ、良?」

 そういう薫の口元はまだ笑っていた。良は兄を睨みつける。

「いいね、その目可愛いよ。必死で逃げてきたかいがあるよ」

「逃げて……」

「良も知ってるだろう? 彼らを追うあれを」

「……噂では」

 薫が言っているのは宇宙にはびこる悪霊や悪魔を狩り続けている世界的組織のことだ。しかしそれは良も噂でしか知らない。それは本当は存在しないからなのか、それともこんな極東の島国にまでネットワークを張る必要がないと判断しているからなのか。

「兄さんも追われちゃってね? 大変だったよ?」

「……そうですか」

「冷たいなぁ、良。まあそこがまた可愛い……ああそうそう」

 不意に薫は笑みを強くした。

「何て言ったけねえ、良? 良の幼馴染の女の子」

「……え?」

「ああ、思い出した。夢、だ」

「夢? 夢が何か?」

「あの子も美味しいだろうねえ。兄さんはね、良。五年前の味がまだ忘れられなくてね。あの子はあいつの妹だから、きっとあいつと同じような味なんだろうね、良?」

「に……兄さんっ?」

 思わぬことを口走り始める兄に良は目を見開いて叫ぶ。

「まさか夢を食べようとしているのですかっ?」

「あはははは。心配かい、良? あの子可愛いものねえ。お前に勝るとも劣らない」

「兄さん!」

「良、一つゲームをしようか?」

「……ゲーム?」

「二十四時間、夢ちゃんを俺から守ってごらん?」

「な……」

「守れたら良の勝ち。守れなかったら兄さんの勝ちだ」

 あははは、と笑いなら薫は闇に溶けていく。

「! 待て、兄さん!」

「良? 約束だよ? 明日からゲーム開始だからね?」

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 翌日。

 良はだるい体に鞭を打って登校した。昨日あれから一睡もしていない。

「おはよー良―。……どうしたの?」

「あ……夢」

「気分悪いのー? 保健室で休んでれば?」

「いえ……大丈夫です」

 無理矢理笑顔を作って夢を遠ざける。

 夢は首を傾げると良の額に手を伸ばしてきた。

「熱あるんじゃないー? ちょっと熱いよ?」

「大丈夫ですよ、夢」

 良がそういうと夢は何処かへ行ってしまった。

 ふう、と良は息を零す。

 今日という日が終わるまで、眠れない。仕方なく授業中に寝ることを決意し、机に突っ伏すことにした。

 しかし不意に冷たいものが頬に当たる。

「な、何……?」

 見上げれば夢が冷たい缶ジュースを押し当てていた。

「夢……」

「それで少し冷やしておきなよー。どうみても良、熱あるし」

「……ありがとう」

「り、良に倒れられたらぼくの成績が逃げていくからね!」

 ごまかすように夢は笑った。

 

 

 

 学校が終わり、放課後。

 良は家に急いで戻り、鞄を放り投げ、いつも愛用しているナイフを手に取った。そして家を出る。

 目を閉じ、夢の気配を感じ取る。

 夢は今、駅前のファーストフード店でアルバイト中らしい。

 人通りが多い街の中心を抜けて良はそこにたどり着いた。カウンターの中で夢が接客をしている。

 良は近くのビルに寄りかかり、夢の様子を観察する。

「夢……」

 

「やれやれ、頑張るんだね良?」

 

 唐突に声がした。

 冷たい空気を感じて良は振り向く。

 ビルとビルの間の陰に薫が立っていた。

「兄さん……」

「夢ちゃんのことがそんなに好きなんだね? いいね良、面白いよ。兄さんを楽しませてくれるなんて、兄思いの優しい、可愛い弟だねえ」

 その言葉に良は答えない。

「あはは、良? 答えてくれないのかい? まあいいけどさ。約束してあげるよ、可愛い弟。太陽が出ているうちはあの子を襲わない。彼らは太陽が苦手だからね? 夜だよ、良? お楽しみは夜にとっておくんだよ?」

 笑いながら薫は闇に消えて行った。

 

 

 

 夜。

 良は夢の家の前に建物の陰に居た。今朝の朝食以降何も食べていない腹が切ない音をたてる。

 時計を見た。

 午後八時四十七分。

 今日という日が終わるまであと三時間弱。

 アルバイトが終わってから夢は真っ直ぐ帰宅し、それから一歩も外に出ていない。

「まるでストーカーみたいですね……」

 現在の自分の状況を自嘲する。

 その時、ガチャと鈍い音がした。

 見れば、夢が出かけるところである。

「こんな夜中に……どこに?」

 そうっと彼女の後をついていこうと良はそこから出た。

 その途端。

「あれー? 良じゃん、何してんのそんなとこで?」

「あ……いや、別に、何もしてませんよ?」

 夢に見つかってしまった。

 慌てふためく良に夢は首を傾げる。

「ゆ、夢は……こんな時間に何処に行くんですか?」

「近くのコンビニー。なんか急にプリンが食べたくなってねー」

 その言葉に反応するかのように良のお腹がまた音をたてた。

「……良、お腹減ってるの?」

「あ……ええ、まあ」

「一緒に御飯買いに行く? 夕飯も食べてないような音だったね。もしかしてダイエットー?」

「そんなわけないでしょう」

 否定する良に笑いかけながら夢は歩き出す。その後ろに良は寄り添う。

 二人の影を半月から来る月光が照らしていた。

 

 

 

 買い物を終え、二人は来た道を戻り始めた。

 良は時計を確認する。

 午後九時三十分。

 今日が終わるまであと二時間半。

「良の家こっちじゃないよねー?」

「あ、はい。そうなんですけど……」

「なんかあるの?」

「……あることはあるんですけど……」

「何々? もしかしてぼくに関すること?」

 立ち止まり、良を振り返りながら夢は問う。

「まあ……そう、なりますかね?」

「へー? 何?」

「それは……」

 なんて言おうか、良は悩む。本当のことを言ってこの世界の実態を彼女に言うわけにもいかない。

 その時。

 

 良の視界の隅に黒い影が映った。

「夢、危ない!」

「え? ……うわあっ?」

 夢の手を掴み、良は彼女を自分の方に引き寄せる。

 数秒前まで夢がいたところを影が横切る。

「うわ、な、何っ? 良これ何っ?」

「あとで説明してあげます! 今は黙って下さい!」

 夢の腰に手を回して彼女をしっかりと抱えると良は跳んだ。

 夢が悲鳴にならない声を上げる。

 無数の影が彼らを取り囲む。それぞれが人の形となって良たちに襲い掛かった。

 彼らの攻撃はほぼ全て夢を狙っていた。

 鍵爪に変化した影が夢の胸元を狙う。

「夢っ!」

 咄嗟に良は夢の胸の前に腕を差し出した。

 ざく、と嫌な音がする。

「りょ……良!」

 夢をかばった腕から鮮血が迸る。痛みをこらえ良は攻撃をかわし続けた。いつものナイフをなんとか取り出すと反撃を始める。

 素早い動きで一つ、また、一つ。

 隙を見て地面に降り立ち、上空からくる影を一つ、また一つ。

 けれど数は全く減らない。

「くっ……」

「良……良、大丈夫?」

「え、ええ……大丈夫です。……必ず、夢を守りますから」

「……良」

 腕を夢から外し、良は自分たちに襲い掛かってくる彼らを睨んだ。

 

「限界みたいだねえ、良?」

 

 声が、響いた。

 空を見上げればそこには含み笑う薫。

「今日という日が終わるまであと……一時間だよ、良? どうやらゲームは僕の勝ちみたいだね?」

「あ……」

 夢の喉から音が漏れた。

「……人……人……が……」

「久し振りだね、夢ちゃん? 君の御兄さんは美味しかったよ?」

「え……? 兄、貴?」

「そう、僕は君の御兄さんを殺したんだ。とても美味しかったよ? あの味が僕は忘れられなくてね……あいつの妹である君だったら似た味かな、と思って。だから今回君を襲うことにしたんだ」

「え……? 良? どういうこと?」

「――生き延びれたら説明します、夢。だから今は」

 夢をかばうように良は彼女の前に立つ。

「かっこいいよ、良。でもね?」

 薫の左手が上がる。周りの影たちがざわめき始めた。

「ゲームは僕の勝ちだ」

 にやりと笑い、薫は手を下げようとした。

 

 瞬間。

 

 明らかに月明かりではない光が三人を照らした。

 同時に回りにいた影たちが消える。

『巽 薫。大人しく捕まりなさい』

「あ、あれは……?」

「まさか……例の」

 良と夢が目を瞬かせ、呆然としているのと対照的に薫の顔には焦りが浮かんでいた。

「ちっ……いいところで!」

 くるり、と薫は空中で踵を返した。

 しかしその目前に誰かが降り立つ。

 薄い灰色の服を着た、少年のような少女。

「世界守護法第八百八十四条により、君を逮捕する」

 少女の手が素早く空中に何かを描く。

 次の瞬間、薫の腕は青白い光でがんじがらめにされていた。

「おとなしく世界裁判を受けるんだね?」

 少女のその言葉と同時に薫の体が消えていく。

 そして、彼女は良と夢を見下ろした。

「逮捕に御協力ありがとう。君は……退魔師か。こんな極東にもいたんだね。これはネットワーク張りなおさなきゃ」

「あなたは……」

「僕? 僕はショウヒ。世界を守る者の一人だよ」

 そう言い残し、少女は笑い、そして闇の中に消えていく。

「……良、いったいなんだったの……?」

「あ、ああ……あれは……」

 良は答えようとしたが意識が急激にぐらついてきた。

 景色が色を失う。音がねじまがって聞こえる。

「良? ……良っ?」

 守りきった少女の顔さえ、まともに見れない。

「夢……」

 良は意識を手放した。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 目が覚めると良はベッドの上にいた。

「ここは……」

「良!」

 傍らで声がしたのでそちらに首を傾ける。

 そこには潤んだ瞳で見つめてくる夢の顔があった。

「良かった、気づいたんだ」

「夢……」

「ここは病院だよ。良、危なかったんだから」

「生きてた……良かった……」

 ほう、と良は安堵の息をつく。

「あ……そうだ、良」

 夢が改まった顔で良を見る。

「大方……良のお父さんとお母さんから話、聞いた」

「……そう……ですか」

「――良の御兄さんは許せない。兄貴を殺したんだもの。……でもちゃんと捕まったし。――もうぼくにはどうだっていい話」

「……夢?」

「ぼくにとっては……良がぼくを命かけて守ってくれたって事実のほうが大きいから」

 真っ直ぐにこちらに目を向けて言葉を紡ぐ夢に良は起き上がって手を伸ばした。肩を抱いて引き寄せる。

「これからも何かあったら守ってくれるよね?」

「――はい、僕でよければ傍にいます」

 二人は囁き合い、笑いあった。

 


……コメントしにくい話を書いてしまいました(汗)。最後の数行かなり恥ずかしい(汗)(汗)。



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