罠
……時に人は、思わぬ罠にかかることがある。
目覚まし時計が壊れてた。おかげで寝坊しちゃった。
ああ、今日は朝からついてない。朝ご飯を抜いて、手早く制服に着替えた。
親が女の身嗜みの事とか、今日は雨が降るそうだからとか言っているけど。そんなの気にしてられない時間帯なんだって。
渋る親を横目に、家を飛び出した。
電車に乗って学校へと向かう。
あ、やばい。
今日数学当ってたんだっけ。ああ、面倒くさい。ただでさえ分からないのに。何で嫌いな数学で先生に当てられなくちゃいけないんだろう。
いいや、さぼっちゃおう。確か数学二時間目だったし。一時間目だけ出てエスケープ。三時間目は大好きな日本史だから出ようかな。それまで図書館で時間潰そう。
あ、乗り換えなきゃ。
今日も授業しんどかった。英語も分からなくなってきてる。寝てるのが悪いんだって分かってるけど。眠くなる授業する先生がいけない。
まあ、いいや。もう放課後だし。遊びに行こう。一人ってのは虚しいけどね。友達は誘ったけど、塾とかだって。あ〜あ、一人独り。
行きつけのゲーセンには新しいゲームが入ってた。
それに熱中してたらすっかり暗くなった。
もう帰ろう。
外に出たら分厚い雲が空を覆っていた。
やば、もしかしたら雨降る? そう言えばそんなことを朝親、が言っていたような。
駅まで歩いていたら絶対降りそうだ、雨。
あ〜あ、今日は本当についてない。しかも雰囲気的に結構やばそうよ? 神様は何か恨みでもあるんだろうか。
待つか、それとも突っ走るか悩んでいたら、真向かいの古ぼけた店が目についた。あんな店あったっけ。
あ、傘売ってる。
じゃ、あれ買って帰ろうかな。雲の様子からして本当に降りそうだし。降らなかったら降らなかったら良しってことで。
真向かいの店までダッシュして、傘を手にとった。
ちょっと古めかしい傘だ。こんな店だからかな。この店、何の店だったけ? 普段全然意識してない。けど今日はありがたい。
店番のじいさんにお金を払って。
さあ、帰ろう。
古そうな傘だけど、結構大きいから濡れることはないと思うし。
あ、雨が降り始めた。けど傘買ったから大丈夫。
帰ろうっと。
――……え?
◇ ◇ ◇
時に人は、思わぬ罠にかかることがある。
ほら、ごらん。
今日もまた一人。
――彼女雨が降ると思ったのよ
傘を開こうとしたのよ
パチンと音がしたのよ
罠が閉じたような音だったのよ
以来 彼女を見た人はいないのよ
『屋根裏の明かり』
シェル・シルヴァスタイン